現場で当たり前になっている「きつい」作業の見直し
自動車部品メーカーで取り組んだ、現場物流の改善プロジェクト「BANSO Pack」の事例を紹介致します。
今回、現場物流の見直しを行うベンダー工程では、ベンダー(曲げ加工機)を用いてワーク(金属)を金型に合わせて特定の形状に加工します。
注目したのは、毎日使用する金型の移動作業に対して現場作業員が抱えていたモヤモヤです。
①1個あたり約15kgある金型を手で抱え、5m先の機械まで運ぶのがきつい。
②保管棚にある金型が乱雑に置かれていて見た目が悪い。
お客様にヒアリングを進めていくと、金型の活性指数が低いことが原因で作業負担が大きくなっていることが見えてきました。活性指数を上げる方向で工程内物流の見直しを進めていくこととなりました。
活性指数を見直して現場のムダとりを!
活性指数とは、モノの置き方や移動の仕方によって発生するムダを数値化したものです。ムダが多い置き方や運搬方法は活性指数が低く、活性指数が高くなるほどムダが少なくなります。活性指数が大きくなるような取扱い方法を採用していくのが現場KAIZENの考え方です。
モノの状態 | 必要な動作 | |
---|---|---|
活性指数0 | 床や棚へのバラ置き | まとめる/起こす/上げる/動かしだす |
活性指数1 | 箱や袋に入れた状態 | 起こす/上げる/動かしだす |
活性指数2 | パレット上に置いた状態 | 上げる/動かしだす |
活性指数3 | 手押し車に置いた状態 | 上げる/動かしだす |
活性指数4 | 動いているもの(コンベアなど)の上 | なし |
金型保管棚の状態は「活性指数0」となります。現場作業を見せていただくと、「重い金型の持ち運びはきつい」、「出し入れするときの体勢は腰に負担がかかっている様子」、
「棚の奥にしまった金型が取り出しづらそう」といった様子が見られました。活性指数0の状態では作業負担が大きいことがわかります。
現場でお客様と意見交換しながら試作台車の修正点を確認
保管と運搬の兼用台車を用いることで、現場の作業員が感じていたきつい作業のKAIZENを図ることにしました。金型を傷付けないようにゴム製の天板にするなど、使用目的に合わせてこだわった仕様の試作台車を 工程内で試してみました。保管場所からベンダー脇まで金型を台車で持ち込むことができるようになりましたが、持ち手の高さが低く作業性が悪いなどの課題も見えてきました。
安全性と作業性を見直して「ムリ作業」を解消する理想の金型運搬台車に
金型運搬台車の持ち手を高くし、安全面から板の四隅にRを付けて丸くして、ベンダー工程への台車導入が完了しました。工程内を雑然とさせていた金型保管棚を撤去し、金型運搬台車の置き場所にしたことで見た目もすっきりしました。
お客様へのヒヤリングと試作の運用を繰り返してお客様の理想を形にすることができました。また、金型を棚保管から台車保管にすることで段替え作業が10分から5分に短縮することができ、生産効率の向上につながる副次的な効果も出すことができました。